ひよこ図書館

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中高生向け韓国文学

今回は、中高生向け韓国文学をご紹介します。

 

 

 

はじめに

4月から中学校勤務になりました。

女子生徒を中心に韓国語の本や旅行本がよく貸出されています。

韓国文学の本も時々貸出されています。

小説、エッセイ、自己啓発本などいろいろ含めてご紹介していきます。

 

小説

 

『ペイント』イ・ヒヨン

 

あらすじ

「自分の親を自分で選べる」主人公の物語。

子どもを育てられなくなった親が子どもを預けるセンターでは、

子どもが親を選ぶ面接をして、自ら子どもを選ぶ。

子どもは面接にくる親たちを冷静品定めしつつも

退所期限の20歳に焦りや不安を抱えている。

20歳を過ぎて親がいないと、

ID(身分証のようなもの)にセンター出身と刻まれてしまうから。

ジェヌ301という名前で管理された主人公が

悩み、苦しみながら出した答えとは……。

 


感想など

個人的に中高生にイチオシ!

中高生世代は多分、多かれ少なかれ親に不満があると思います。

もしも「自分が親を選べるとしたら」という設定に

少しは興味が持てるのではないでしょうか。


センターの子どもたちは

入所月に関連した名前と番号を組み合わされた名前

(ジェヌ301など)で管理されていたり、

世話ロボットや昆虫ドローンがいたり、

近未来設定も面白かったです。

親子関係、差別など考えながら読み進めました。

映像化されたら観てみたいなと思いました。

 

『アーモンド』ソン ウォンピョン

 

 

あらすじ

脳の扁桃体(アーモンドのような形)が小さく、

何を見ても感情が沸かない主人公のユンジュ。

母は「喜怒哀楽」を叩き込み、"普通"の子に見えるようにする。

そんな母はユンジュの目の前である事件に巻き込まれ一人身に。

ユンジュは高校生になると、

ユンジュとは正反対の激しい感情を持ったゴニと出会う。

まるで"怒り"の感情だけを持ったゴニとの出会いが

ユンジュを大きく変えることに……。

 

黒あんず 監修 アサノタカオ 〔ほか〕執筆

『韓国文学ガイドブック』(2021年)Pヴァイン

p146、147によると、SHINeeのテミンさんの自宅に

『アーモンド』があったことで話題になったそうです。

 


感想など

感情を持たないユンジェが語り手です。

小説を読んでいるというよりも、

事務的に書かれたカルテを見ているような

不思議な気持ちになります。

いじめ、暴力のシーンも淡々と語られています。

辛いシーンはありますが、淡々としているので、

離脱せずに読み終われました。

終盤の怒涛の展開は必見です!思わず涙がこぼれます。

 

『ミカンの味』 チョ・ナムジュ

 

 


あらすじ

映画サークルで出会った女子中学生4人は

旅行先で「同じ高校に行こう」と約束する。

その約束から始まる4人それぞれの事情とは……。

ソランは平凡すぎることに悩んでいる。

ダユンは優等生。病気の妹がいる。

ヘインは古い考えの父にうんざり。父は事業に失敗。

ウンジはいじめが原因で転校。

厳しい学力社会、家庭環境、ジェンダーギャップが絡み合う。

 

感想など


「82年生まれ、キム・ジヨン」と同じ作者です。

キム・ジヨンが一般向けとすると、こちらはYA向けです。

女子中学生たちが置かれている環境

(学校での友人関係、成績、先生との関係、家族との関係、経済状況)が

キリがないほど生々しく描かれています。

前述の「ペイント」の方は選べることで悩み苦しむ話でしたが、

「ミカンの味」は選べないことで悩み苦しむように思いました。

中学生の手で変えられることはほとんどないけれど、

最後に一歩踏み出すところが青春らしさがあります。

 

余談ですが、トッポギ、サムゲタン、チキンなど

韓国料理が食べたくなります(笑)

 

『世の中に悪い人はいない』ウォン・ジェフン

40のお話が詰まった短編集です。

タイトルの通り、悪い人に見える人や悪い噂がある人の

裏側をこっそりと紐解くような話が多かったです。

展開としては、少しホラー的だったり、

教訓めいた寓話のような話だったり。

帯にあるようにBTSのJ-HOPEさんが読んでいるようです。

 

 

『保健室のアン・ウニョン先生』 チョン・セラン

 

私立M高校に赴任した養護教諭アン・ウニョンのトンデモ物語。

アン・ウニョンには死んだ人だけでなく人の思いが形になって見える。

ゼリーのようなそれらをやつけるために

おもちゃのレインボーの剣とBB弾の銃を手に戦うが…。


Netflixで『保健教師アン・ウニョン』というタイトルで映像化。

You Tubeで2分のオフィシャル予告編が見れます。

 

感想など

本を読んでから、You Tubeの予告編を見ました。

映像で見るとよりトンデモが増します(笑)

Netflixを見ている中高生がどのくらいいるのかは分かりませんが、

話題としてはいいのかなと。

 

本文で、「死んでいる人よりも生きている人の方が

色々な思いを生み出す(スライムみたいな生き物)からやっかいだ」

のようなな描写があります。

人のやっかいな部分をスライムで表現しつつも

向き合うべきところはそこなんだろうなと思いました。

 

 

『フィフティピープル』チョン・セラン

 

大学病院を舞台に50人それぞれのある日、ある時を描く連作短編集。

患者、医者、看護師など病院で働く人など

繋がると思っていなかった人物と関わりがあります。


相関図を作った方もいるようです。

Twitterでアップされている方がいました。


感想

お気に入りの作品が1つは見つかると思います。

読んでいるとヒリヒリした痛みを感じる話、

じわじわ笑えてくるような話、

無性に愛しさを感じるよな話もあったり、

様々な感情が湧き上がってきます。

 

韓国独特の文化がよく出てきます。

途中で止まってしまうかもしれません。

難易度高めな1冊です。

韓国にかぎらず、本を読み慣れている人に。

 

詩集


『花を見るように君を見る』ナ・テジュ

 

Amazonの画像にもあるようにBTS RMさん、
BLACKPINKジスさんの愛読書らしいです。

韓国ドラマの作中で贈り物としても使われていたそうです。

 

『あの人ひとりがこの世のすべてだった頃』ナ・テジュ

 

 

『花を見るように君を見る』と同じ作者です。

BTS J-HOPEさんが読んだ詩も載っているそうで話題になった1冊です。

どちらも優しくて柔らかい言葉を集めた詩集です。

こちらの『あの人ひとりがこの世のすべてだった頃』の方が

表紙もかわいらしい印象でとっつきやすく、

中身のイラストも多いです。

中高生にはこちらの方が読みやすいかもしれません。

 

愛だけが残る

愛だけが残る

Amazon

11月4日発売の新刊です。

 


エッセイ・自己啓発

韓国の本は、エッセイと自己啓発の区切りがとても難しいです。

韓国文学として9類に置くか、自己啓発として159に置くか。

いつも悩みます。


『+1cmたった1cmの差があなたの世界をがらりと変える』キムウンジュ

 

 

韓国エッセイ・自己啓発ではイチオシのシリーズです。

かわいいイラストと詩のような言葉で構成されています。

+1cm,

+1cm LIFE

+1cm LOVE 

+1cm IDEAがあります。

どれも読みましたが、+1cmがシンプルで一番よかったです。

 

『私という植物を育てることに決めた』キム・ウンジュ

 

 

+1cmシリーズの作者の本です。

こちらは対象年齢が少し上だと感じました。

文字でじっくり読みたい人や実際に試してみたい人には

こちらがいいのかもしれません。

食べたものを記録したり、気分を記録したり、

自分という植物を育てるための行動を起こせます。

 

『私は私のままで生きることにした』キム・スヒョン

 

 

書店でもよく見かけるこちら。

ゆるいイラストでまさに韓国っぽい本です。

中身は、著者(イラストレーター・作家)のエッセイでありつつ

自己啓発本のような…。分類に迷います。

著者の就活エピソードやインスタやSNSとの付き合い方など

現代人あるあるがたくさん。

何者にもなれなくてもいいそんな気持ちになります。

 

おまけ

読んでみて、個人的に中高生以上対象だと思った本

 

『82年生まれ、キム・ジヨン

高校ならあってもよいかも…?

途中読むのが辛くなって手が止まってしまう部分もありました。

就職、結婚、子育てを経験している人に刺さる本だと思います。

 

『死にたいけどトッポッキは食べたい』

エッセイというより

どちらかといえば、闘病記だと感じました。

気分障害の著者の話です。

 

参考文献

『韓国文学ガイドブック』黒あんず監修

 

 

 

おわりに

昨年あたりから韓国文学を色々読んでみて、

まとめるのにかなり時間がかかりました。

エッセイ・自己啓発本に関しては、

大人向けと中高生向けの線引きが難しく、かなり迷いました。

何かの参考になれば幸いです。

 

書架にあるだけだと埋もれてしまうので、

「○○さんの愛読書」「韓国で人気!」など簡単なPOPを

つけて展示すると、貸出されました。

中学では展示を工夫していきたいなと考えています。